岩佐又兵衛ーまさに超絶技巧!!

十二単の黒髪の女性が白描風の表現で描かれた一枚。ぐぐっと画面によってみると、その髪の毛の一筋一筋が丹念に、一種、偏執狂的とも思えるように描かれています。現在、山種美術館では開館記念特別展VI「江戸絵画への視線」が開催(9月5日まで)されていますが、その中の1点と言われれば、この岩佐又兵衛「官女観菊図」でしょう。 全体はこのように軸として仕立てられています。御所車にのった三人の官女が御簾をあげて美しく咲き誇る菊を眺めています。岩佐又兵衛といえば、「山中常盤物語絵巻」などで、刀ですぱっと切られている人体や血しぶきの飛び出る場面など、どちからかというと血みどろ絵のイメージがあります。しかし、この一枚はなんとも自然で、女性のふとした美しい仕草が巧みに画面に捉えられています。 もともと、この絵は六曲一双の屏風であったものですが、現在では一枚ずつばらばらに軸装されており、そのうちの二幅は所在不明となっています。 又兵衛の父親は荒木村重といって、織田信長に仕える武士でした。しかし、信長の怒りをかい、父親も母親も幼い又兵衛の目の前で惨殺されてしまったと言われています。成長した又兵衛が絵師となり「山中常盤物語絵巻」のように鬼気迫る描写を行えたのも、その時のつらく恐ろしい経験が心のなかにずっと置かれていたからでしょう。 もう一つ、そのことで幼いうちに母親を亡くした又兵衛にとって、母親という存在は永遠の憧れになったともいえるでしょう。黒髪に対する偏執狂的なまでのこだわりは、その思いに起居するのかもしれません。 今回の山種美術館の展示では、この作品は表面がガラスで覆われていますが、かなり画面ぎりぎりにまで近づいて見ることができます。こういった機会は滅多にありませんから、ぜひ画面をつぶさに見てその超絶技法を堪能して頂けたらと思います。 山種美術館の開館記念特別展VI「江戸絵画への視線」は9月5日まで開催中です。

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