ダ・ヴィンチの解剖図からダミアン・ハースト、人口皮膚培養器まで

〈↑会場入口 ピンクのハートがモチーフに使われていて、かわいらしい感じになってます〉 解剖学の特集を行ったときにたいへんお世話になった森美術館の「医学と芸術」展が明日から開幕します。 今日は、一足お先に内覧会へ行ってきました。以下、展覧会の内容をご紹介します。 〈↑レオナルド・ダ・ヴィンチ「頭蓋骨の習作」ROYAL COLLECTION c2009 HER MAJESTY QUEEN ELIZABETH IIは、バックに拡大したパネルが展示されている。本物の持つ線の強さは、見てみないとわからないものですね〉 まず、なんといってもこれでしょう。日本初公開となるレオナルド・ダ・ヴィンチの解剖手稿。3点はいずれもA4サイズ程度の小さなものですが、ダ・ヴィンチの直筆。といっても鏡文字なので文字は読めません(というよりも、普通に書いてあっても知識不足の私では読めませんが……すいません)。ダ・ヴィンチは自身で人体の解剖を行うほど人体の内部に対する知的欲求の強かった人。内部の構造が、詳細に絵に描かれ、文字で解説されています。 続いては、日本から応挙と暁斎の骸骨図。応挙の骸骨は足を組んで座禅をしているような格好。不思議なことに、背景は波になっています。もしかしたら、舟で浄土へと向かった修行僧のイメージがあるのかなと思いました。 そのお隣には象牙の人体模型が。本当に小さなもので、手のひらに収まってしまうようですが、おなかをあけると中には腸や胎児が埋め込まれている精巧なもの。熱狂的なコレクターがいたということが想像されます。同じお部屋には、より医学的に使用できるようになった解剖図などが展示してあります。 さらに進むと、義手や義足なども展示され、なかには蜷川実花さんによるポップな義足もあります。そして驚いたのが、狩野一信の五百羅漢のうちの一点が出ていたこと。狩野派のほとんど最後の人ですが、前から実物を見たくても見る機会がなかったので、本当にうれしかった。あでやかな色彩、明瞭なモチーフ、しかもうまい。 〈↑ジル・バルビエ「老人ホーム」Courtesy: Galerie G.-P. & N. Vallois, Paris 近くに寄ってみると、皮膚のしわやシミまで微細に作られています〉 松井冬子さんや野口哲哉さんの新作も登場。現代の作品には、科学がここまで進んで、その先にどういう未来が待つのかという疑問や警鐘も感じられます。老いたアメリカンヒーローたちが老人ホームで暮らしているという立体作品は皮肉たっぷり。 〈↑組織培養&アート・プロジェクト(オロン・カッツ&イオナ・ズール)(西オーストラリア大学シンバイオティカ主宰)ヴィクティムレス・レザー:テクノサイエンス的「身体」で育てられた縫い目のないジャケットのプロトタイプ Collection of the Artis〉 最後には、人工皮膚培養する装置が置かれ、実際に実験が行われています。会期中に、その皮膚はどんどん培養されていくそうです。 ヴェサリウスやアルビヌスなど解剖図といえば彼らという作品も並び、同時に現代美術、日本美術の古いものまでボリューム満点な展覧会です。純粋に美術品としての美しさを楽しむもよし、人体の謎に思いをはせるもよし。でも、科学の進歩とともに、人間はいったいどうなっていくのか、一時離れてしまった医学と美術の関係が、現代に再びリンクして、新たな定義を投げかけているように感じられました。 「医学と芸術」展は森美術館で来年2月28日まで開催中です。 なお、足を運ぶのが難しいという皆様には、この展覧会のカタログ「医学と芸術:生命と愛の未来を探る」が平凡社から発売になります。 また、小誌「美術の窓」11月号の巻頭特集「人体を描く~美術解剖学でステップ・アップ」では、森美術館のプロダクト・マネージャー広瀬麻美女史に詳細に語って頂いております。

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